一人で出来る演劇の練習方法
演劇から社会を元気に!社会人の「気持ち」を全力支援するENTRY ACT演劇教室✿
代表の大江千雪(おおえちゆき)です。
今日も演劇や日常生活に活かしていただける記事を書いていきます。
一人で出来る演劇の練習方法、知っていますか?
演劇は「チームプレー」なので(たとえひとり芝居でも)練習は稽古場やレッスン・ワークショップでしかできない
と思っていませんか?
レッスンやワークショップは練習場として利用できる、
演劇のプロである演技講師にレクチャーしてもらえる有益な場所です。
レクチャーしてもらえる場所をお持ちなら定期的に演技の練習をすることでスキルアップ・上達は可能でしょう。
ですが、ちょっと考えてみましょう。
例えば『ピアノのレッスン』。
週に一回のレッスンの時だけ鍵盤に触る人が本当に上達するでしょうか?
例えば『塾』。
塾の授業の時だけ勉強する人が本当に志望校に合格するでしょうか?
答えは、ノーです。
ピアノであれば、
1日鍵盤に触れなかったら取り戻すのに3日かかります。
3日間鍵盤に触れなかったら取り戻すのに9日かかります。
サボった日数の3倍も元の状態に戻るのに時間がかかってしまうのです。
演劇って、それと同じだってことご存知ですか?
演劇は「チームプレー」感が強いので
家ではなにもせずに稽古場で練習するものだと思われがちなのですが
それは大きな誤解です。
自分には天性の才があるから、なんの努力もせずに素晴らしい演技ができるという
確固たる自信があるのであれば挑戦してみてもいいです。
ただ、
「台本を見た瞬間に世界が自分の中に流れ込んできて
ト書きもすべての役のセリフも一度目を通せば入ってきて
なにも考えずになにも訓練せずに最高の音で言葉を話すことができて
これ以上ないほどに圧倒的な正しさとも言える居方ができて
瞬間で役とリンクして舞台上で光り続けられる人」
であれば、です。
もしもそんな人がいたら
演劇界で重宝される存在なので今すぐその才能を演劇業界で存分に活かしてください。
そうでないと自分が思うのならば、この記事でお話しする「自主稽古」を行ってください。
演劇は「チームプレー」だからひとりで練習できない
と考えるのは今すぐにやめましょう!
「チームプレー」だからひとりで練習してこないと周り(クラスメイト)に迷惑がかかるのです。
ちょっと厳しい書き方になってしまいましたが、
練習してこない(セリフを入れてこないなどという基本的なことから、セッションでただ中身のないセリフを音で出してしまうことまで)
ことで周りの大事な時間を奪いかねないのです。
練習してこないことは、「自己中心的」以外の何物でもないということなのです。
一人で出来る演劇練習メニュー
①自分の「役」が置かれている状況や目的・それを達成するための行動を読み抜く
登場人物は必ず、そのシーン・その場所で【何か】を求めてそこに存在しています。
その【何か】はなんでしょうか?
そして、欲している何かを得たいがために何か行動を起こしているはずなのですがどんなことをしていますか?
答えが書かれていないことは「絶対に」ありませんので、気づけないとしたら見落としているのです。
ここをクリアせずに次のステップには進めませんのでご注意!!
②魔法のIFを使って自分と役をすり合わせる
スタニスラフスキーシステムの魔法のIFとは、役と自分の【共通点】を探し出して「もしわたしだったら・・・」と仮定していく作業です。
『もし』あなたが役と同じ状況に立たされた時、まったく同じ行動を起こせるのかどうかを自分に訊いてみましょう。
まったく同じ行動がとれないのであれば、心からセリフが出せないのであれば、自分と役の間を埋める必要がありそうです。
「同じ状況のみでは同じ行動はできないけれど、
余命半年だったら同じことができるだろう』
など、『もし』を使って想像を働かせてみてください。
脚本の意図を崩壊させるような逸脱した『もし』ではなく、
脚本にその記述はないけれど、その可能性もあるな・・・という想定にしてくださいね。
③本を入れる・落とし込む
ステップ②までで何日かかったでしょうか・・・。
慣れていない方だと1週間かかってしまうかもしれません。(慣れてきたら本のボリュームによるけど3日くらいで完了するかな?)
ここまできて、やっと自分の中にセリフや行動を入れていく作業です!
まずセリフから入れるやり方はわたしはおすすめしていません。
なぜこの言葉が出てくるのか理由もわからずにセリフを入れてしまうと、「先入観」でセリフの言い方まで入れてしまいがちなのです。
言い方のクセが一度ついてしまうと、落とすまでに相当な努力が必要なので注意してくださいな。
まずは、黙読します。黙って本に目を落とし、ステップ①②で得た自分の想定を持ちながらひと文ひと文読み進めます。
そうすると、役の「物語の中の役割」が見えてきます。
この本・シーンの中で、この役が話すこのセリフ(や、する行動)を観客に伝えたいのかもしれないなぁ
またそれとは別に、
役としてそのシーンの中で生きている感覚になって読み進めていきます。
最初は黙読、慣れてきたらぼそぼそと呟いて。
その時に感情が動いたら、そのまま乗せていってください。笑いたかったら笑って、泣きたくなったら泣くのです。
忘れてしまう前に、心が動いたポイントをメモしてください。
これによって俳優がグッとくる行動やセリフが定まってきます。
この直感は大切で、演じ手によって同じ役が全く別物に見える「オリジナリティ」のスタート地点になります。
本を読む時の心理状態やタイミングによって感じ方に多少のバラつきが発生するかもしれませんが、
この作業を繰り返す中で「この人(役)をどうやって舞台の上に乗せてあげたいか」を考えてあげてください。
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物語を壊すようなプランにしないように注意!
さらに慣れてくると、台本に目を落とした瞬間から
条件反射のように物語にグッと入り込めて、
もっと声を出したい・もっと動きたい
欲が出てきます。
④自主稽古
大体③のような状態になったら台本を見なくてもセリフが出てくるようになりますが、
台本を閉じて、頭の中で世界を再生しながら
実感をハッキリ持てて(溢れ出すほど)
セリフをぼそぼそ出せるかどうかを確認します。
セリフだけ出てきてもダメ。
湧き上がる感情だけ出てきてもダメ。
同じシーン(できれば自分が超重要と思う短い区切り、2~3ページ程度で)を3回連続で【確認成功】したら合格です。
2回連続で成功して3回目で失敗してしまったら
カウントゼロからやり直しです。
ちなみに、「3回連続」なので、間に飲み物休憩を取ることもせず間髪入れずにトライしてください。
(笑)
厳しいですね。(笑)
ただ、ひとりで練習するよりも稽古場は緊張します。
演出家も見ているし、共演者もいるし。
勝手が違う!なんてこともよくあります。
だからこそ、100%大丈夫だ!という状態まで準備する必要があるのです。
3回連続でグッと集中して成功できたら、それだけでちょっと自信になりますし
おそらくちょっとやそっとの緊張で失敗することはありません。
一人でできる演劇の練習方法のご紹介でした。
もちろん、1シーンのみではなくてひとつの物語を創り上げる時にはここに書いた以外の要素も入ってきますが
一人でできることってこんなにたくさんあるのです!!!!!
演出家の前であなたの演技の練習はしないで。演技講師の前ならいいけど・・・
作品作りの場にいる演出家は、作品をまとめ上げるためにいますので俳優(アクター)の仕事はしません。
自主稽古までのことを「やってきている」ものとみなしてその前提で稽古場にいます。
演技講師は自主稽古のやり方のレクチャー・軌道修正をしてくれます。
だからハリウッドスターは売れても演技レッスン(メンテナンス)を欠かしません。
日本の俳優は売れるとメンテナンスをサボりがちだけど、これはまずいです。
ただ、頼りと言ってもおんぶにだっこでは飛躍的に上達することは難しいです。
演技講師がどんなに一緒に役作りをしようとしても、できるのはあなたの芝居の方向修正・・・
理解が足りてないなと感じてもせいぜい「IF」の気づき・発見や実感作りで、サポートまでです。
出された課題をやってくるかどうか。
あなた自身のがんばりにかかっているということ。
※基本的な考え方・心構え・方法論のレクチャーをせず「ダメ出し」しかしない演技講師が稀にいるようですが、
それは演技講師ではないので心の片隅に置いておいてくださいね!
レクチャーをしない「ダメ出し」屋さんには、「演技手法・信じている方法論は何ですか?」と訊いてみてください。きっと答えられません。
ここまで小難しいことをつらつらと書いてしまいましたが、
それで「演劇って難しいわ・・・」と引いてしまった方、ごめんなさい。
でもね、一度ここまで完璧にやり遂げてレッスンや稽古に来てみてください。
絶賛の嵐になります。
それってものすごく大きな喜びがあることですよ!
せっかくやるんだったら、絶賛されてください。
自分を表現できた喜びを感じていただきたいのです。
そして、朗報です。
この記事に書いたことは、
元々の才能や経験の有無はそんなに関係がなく、
演劇初心者さんでも才能が無くても『できる』、演技のハウツーです。
素晴らしい表現の扉を開けるかどうかはあなたが決めるんです。
ぜひ挑戦してみてくださいね!!!
いざ人前で実践する時に重要なとある考え方を続き記事でご紹介中!
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当記事の続き記事です。
当記事は「家で、一人でできる方法」に絞ってご説明いたしました。
実は、ここでご紹介している「家での作業」と「稽古のやり方」はセットになっています。
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