自分を知る演劇【自分軸と防衛機制】
私は日頃、演劇のレッスンやワークショップを担当させていただいているので
様々な方の演技表現を拝見します。
今回のコラム記事は月間50名の方を約5年の間見させて頂いてきた中で
「演技って人生の荒波をいかに自分軸で生きていけるかのトレーニングだな〜」
と心底感じざるを得ないこと、についてちょっとお話ししていきます。
たった1分程度の短いシーンでも
演技には、出ちゃうんです。
その人のクセが。
このクセって、身体を揺するクセとか目で見えるわかりやすいものだけではなくて
その人が避けていることや思考のパターンになっていること。
精神的にストッパーになっていることや危機を感じた時の回避の仕方。
愛されたいのに相手からの愛を受け取ることができない心。
自己肯定感が下がった原因そのものまではわかりませんが
たった1分の短いシーンであったとしても状態は明確に見えてきます。
人間は「不快」な状態に陥った時に自己防衛の本能が働きます。
「不快」そのものを押し殺して抑え込んで一時的にそこから脱する(抑圧)のか
原因を攻撃して報復することによって不快感を無くそうとする(攻撃)のか
「不快」にさせる物事から目を背けることによって安心を得ようとする(逃避)のか
人はこれらの防衛によって成功体験(快の体験)をすると、それを覚えていてまた次の不快体験の時にも同じ方法を使おうとします。
それがまた上手くいくと、だんだんとクセになっていきます。
「抑圧」「攻撃」「逃避」などの危機回避本能のことを防衛機制と呼びますが、
これは本能なのでほぼ無意識に行われます。
防衛機制そのものは良いとか悪いとかというものではないのですが、無意識化で行われるのでクセになることだけは注意。
また、防衛機制はあくまで対処療法なので「不快」の根元の解消にはなりません。
(一時的に楽になりますがそれだけなのでまた繰り返します)
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本能レベルでは自分の機嫌を取れていないのに、
なんとなく楽になったから「問題は解決された」と認識してしまうのです。
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自分の機嫌を取れていないと
自分の感情がわかりにくくなってきたり
慢性的になんとなく楽しくない、つまらない感じになったり
思考がまとまらなかったり
感情の抑制が効かなくなったり(しかもその後に後悔する)
日常生活に小さな影響を及ぼしてくることもあります。
自分の機嫌を取れないことで、
自分が本当にしたいことが自分でも見えづらくなります。
だから、自分軸でいられない。
本当に機嫌を取れているのか実は機嫌が悪いのか
浅い自分会議では気が付けない可能性もあります。
(演技中に重心がブレてゆらゆらしている方にそれを伝えると、多くの方は言われるまで全く気が付いていません。それぐらい人間は自分のことに気が付けないんです。)
演技での言葉、目線、身体、声、反応、纏っている空気には
その人の人生そのものが乗っています。
私はカフェで1時間話すより1分の演技を観た方がその人がわかると思っています。
それぐらい演劇は自分を知ることができる方法なんです。
何かを変えたいなら、まずは知ることから。