いいもの≠売れるもの
筆者、大江千雪(おおえちゆき)は「演劇」の業界で仕事をしている人間のひとりです。
演劇は仕事として希望する人の数に対して実際に食べていくことができる人が非常に少ない、厳しい業界だと思われています。
事実、私の周りでは優れた技術や芸術への溢れんばかりの愛を持っている優秀な人材の多くが、この厳しさを理由に辞めていきました。
いいものは売れると思っていた
芸能界で売れようとしていた時は、ひたすら現場やレッスンでがんばればいつか売れる!と信じていました。
だから、
レッスンも欠かすことなく出席していたし
演技の勉強で読書もしていたし
前日に突然決まるオーディションやエキストラの現場に対応できるように
アルバイトは「時間の融通が利いて時給がいいところ」を選んで掛け持ちで働いていたし
学校とバイトとレッスンと現場で休むことなく動いていました。
東京まで往復実質4時間かかっていて毎日終電帰りでしたし、
食事は移動中(歩きながらおにぎりを食べる笑)にしか摂れませんでしたし、
学校・バイト・レッスン・現場のいずれかの予定が全くない日はありませんでした。
それでも演劇を続けられたのは
努力すれば必ず夢は叶うと信じていたから。
技術を磨けば売れるんだと信じていたから。
ですが、所属事務所の先輩は売れる人より辞めてしまう人が多くて
「大丈夫かなぁ・・・」という不安はいつもありました。
私なんかよりずっと演技が上手な先輩も
センスの塊のような仲間も
バイトをしていました。
『売れたモデルケース』が身近に殆どいなかったのです。
結論としては、
★いいものであっても売れるとは限らない
ということ。
いいもの=売れるもの
なのであれば才能の塊のような演者さんたちが売れない現実に説明がつきません。
私は、自身のことをよもや成功したなどと考えてはいませんが
バイト時代と今(演劇で生計を立てている)の最も大きな違いは
スキルの高さではなく
世の中の役に立ちたいという想いの強さです。
技術を上げれば売れるんだ!と思っていた時は、自分の為に演技をやっていたのです。
演技で大きな仕事を貰うことばかり考えていました。
そうしたらバイトをすぐ辞められる!と。
自分が演劇に携わることで誰の役に立てるかなど考えたことがありませんでした。
売れるもの=社会の役に立つものです。
この世のお仕事はすべて社会貢献です。
住む家も、着る服も、食べるものも、
「誰か」が提供してくれているから私たちは消費することができます。
自分の演技は、誰かの為になるのかな?
私が演劇を仕事にすることができるようになったのは、これを徹底的に考えたからだと断言できます。
自分が「演劇を好きだから!」「好きなことをやりたいから!」の考えはお客様からお金を頂く理由にはならないのだと気がついて
誰かの役に立とう!と決めて動いて
結果的に演劇を仕事にしています。
誰かの役に立とう!の気持ちを元に
私の場合は「演劇の先生やファシリテーター」だったり「出演者」だったりの仕事を楽しみながら自由にやれています。
好きなことを仕事にすることを夢で終わらせないでください。
ちょっとした考え方の転換で、
結果的に演劇で食べていくことは可能になります。
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